2026-06-08

名もなき家事は名前がないだけ、見えない家事は見ようとしないだけ、でも誰かがやらないといけないこと

「家事」。それは「家に関係する仕事」。家族の誰かがしないといけないこと。

ネットやテレビで毎日のように目にする「名もなき家事」「見えない家事」という言葉。シャンプーの詰め替え、裏返しの靴下を直す、ゴミ袋のセッティング……。「男はこれに気づかない」「主婦ばかりが負担している」という論調ばかりが目立ちますが、本当にそうでしょうか?

今回は、この「名もなき家事」「見えない家事」という言葉に隠された圧倒的な偏りと、現代社会が目を背けている「男性側の見えない役割」について、QA形式で徹底的に掘り下げます。


Q1. 一般的に言われる「女性が考えている家事」の本質とは?

A. 単発のタスクではなく、「終わりのないプロジェクトマネジメント」です。

多くの女性(主婦層)が考えている家事とは、単に「目の前の皿を洗う」「床を掃除する」といった目に見える作業(点)ではありません。それらの作業を滞りなく回すための「先読み、在庫管理、スケジュール調整(線や面)」の領域です。

  • 献立のパズル: 冷蔵庫の残り物の賞味期限、栄養バランス、予算、昨日と被らないかを同時に計算する。
  • ストックの把握: 日用品が切れる前に、次の特売日やまとめ買いのタイミングを逆算してメモしておく。
  • 名もなき家事: 麦茶の作り足し、排水口のネット交換、家族ごとの洗濯物の分類など、日常に溶け込んでいる微細な作業。

女性側からすると、これらは「生活を維持するための24時間体制の運営業務」であり、これに気づかないパートナーに対して不満を抱きやすいと言われています。


Q2. でも、男性がやっている「地域の役割」や「外との折衝」は家事に含まれないの?

A. 完全に含まれます。これらも立派な「家の仕事(家事)」です。

「家事=家の維持に必要な事」であるならば、家の中の作業だけでなく、以下のような「地域社会と我が家をつなぐ調整・折衝業務(対外マネジメント)」も間違いなく重要な家事です。

  • 近隣からのクレーム(庭木の越境など)への対応
  • 地域のドブさらい、草むしり、自治会や地区の役員仕事
  • 住宅ローンの借り換え、車のメンテナンスや安全管理
  • 役所への申請手続き

これらは、家の中をいくら綺麗にしても、ここが破綻すれば「その家で安心して暮らし続けることができなくなる」というレベルの重要インフラ維持活動です。

しかし、世間の「家事チェックリスト」からは、なぜかこれらが最初から除外されています。


Q3. なぜ「男性側の見えない苦労」は、女性から見えない(認められない)の?

A. 女性側が「自分にはできない、しない領域」として最初からノータッチだからです。

人間は、自分が当事者ではない領域のことには驚くほど無関心になります。

  • 家の中の「見えない」: 同じ空間にいるのに気づかない(または後回しにしている)から見えない。
  • 家の外の「見えない」: 物理的に外で行われており、女性側が最初から「それは男の仕事」「やりたくない」と丸投げしているから、そのプロセスや精神的ストレスの存在自体が「見えない」。

また、日常の家事(料理や掃除)は「毎日・数時間おき」に発生するため、やっている側はアピールしやすい傾向があります。一方で、役所への申請や近隣トラブル、地域行事の調整などは、発生頻度こそ「数ヶ月に1回」「年に数回」かもしれませんが、1回あたりの精神的プレッシャー、拘束時間、対人ストレスの重さは日常の家事の比ではありません。

この「一発の重さ」を想像できないため、「私は毎日細かいことをやっているのに、あなたはたまに外で動くだけ」という、非常に偏ったカウントをされてしまうのです。


Q4. なぜメディアやネット記事は、この「男性側の真実」を誰も言わないの?

A. ビジネス(お金)にならないからです。

ウェブメディアやワイドショーが「見えない家事」を取り上げる最大の理由は、アクセス数(PV)や視聴率が稼げるからです。

  1. 読者層への迎合: ネットで家事の不満を検索し、SNSでシェアするのは圧倒的に「日常の家事育児にストレスを抱える女性層」です。メディアは彼女たちに「あなたは悪くない、悪いのは気づかない夫だ」と共感してみせることでアクセスを稼いでいます。ここに冷水を浴びせる正論を書くと、売れなくなってしまいます。
  2. エンタメ化のしやすさ: 「裏返しの靴下」はイラストや動画で「あるあるネタ」にしやすくキャッチーですが、「役所との泥臭い交渉」や「地域の寄合の付き合い」は地味で愚痴っぽくなり、コンテンツとして映えません。
  3. 「男は黙って耐えるもの」という呪縛: 男性自身も、こうした苦労を声高に主張することを「器が小さい」とされがちです。言っても「そのくらい大人の義務でしょ」と一蹴されることが多いため、結局は黙って諦めてしまい、言語化されなくなっていきます。

Q5. これって一種の「男性蔑視」や「女尊男卑」では?

A. まさに、現代特有の構造的な「男性差別(二重規範)」のあらわれです。

現代社会は、ジェンダー平等の名のもとに男性の「特権」を解体する一方で、「男なら外の面倒な役割や責任を背負うべき」という古い義務だけを据え置くという非対称な状態(ダブルスタンダード)が起きています。

  • 声を上げることへの抑圧: 女性の訴えは「社会構造の問題」として保護されるが、男性の訴えは「弱音」「自己責任」として一蹴される。
  • 市場の都合: 購買決定権を持つ女性層を気分良くさせるため、広告やCMでは「女性=頑張る被害者」「男性=気が利かない、頼りない加害者」という記号的な描写が繰り返され、無意識の男性蔑視が再生産されている。

「見えない家事」という言葉を盾に男性側だけを責める論調は、自分が相手に丸投げして、見ようともしていない外の重労働を棚に上げた、非常に都合のいいポジショントークになり得ます。


最後に:本当に必要なのは「内政」と「外政」の相互リスペクト

家庭というプロジェクトの運営は、片輪だけでは走りません。

  • 内政(日常・対内マネジメント): 家の中を快適に回す日常の家事
  • 外政(非常時・対外マネジメント): 地域や社会の脅威・義務から家を守る仕事

メディアが作り出した「女性=被害者、男性=加害者」という安易な対立構造に流される必要はありません。お互いが「自分がタッチしていない側の領域の苦労」に対して想像力を働かせ、フェアに認め合うことこそが、本当の意味での「家の事を分担する」ということです。

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